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コラム:ポスト米中合意、世界経済は「回復感なき株高」の公算大 - ロイター (Reuters Japan)

コラム:ポスト米中合意、世界経済は「回復感なき株高」の公算大 - ロイター (Reuters Japan)

[東京 16日 ロイター] - 米中が通商協議「第1弾合意」に達したが、中国が約束した年間2000億ドルのモノとサービスの輸入増が本当に達成できるか不透明な要因が多い。また、達成された場合は中国の国内産業の需要減になるリスクがあり、中国経済の成長にとって「足かせ」になりかねない。結局、2020年の世界経済は2019年の減速から横ばいで推移する可能性が大きいと予想される。

 米中が通商協議「第1弾合意」に達したが、中国が約束した年間2000億ドルのモノとサービスの輸入増が本当に達成できるか不透明な要因が多い。15日、ホワイトハウスで署名式に臨むトランプ米大統領と中国の劉鶴副首相(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

一方、世界のマーケットは「米中休戦」を評価しており、緩和マネーを背景にした世界的な株高が継続し、ポスト米中合意は「景気回復感なき株高」の流れがメインシナリオになりそうだ。  

<輸入の大幅増、自動車など中国企業に打撃>

米通商代表部(USTR)が15日に公表した合意内容によると、中国は今後2年間にモノとサービスの輸入を2017年比で2000億ドル増額する。17年の実績が1860億ドルだったので、急カーブを描いて増加するイメージだ。

果たして、そんな急増パターンが可能なのかどうか。例えば、工作機械や電子機器、航空機、自動車、医療機器などの工業製品は、20年に329億ドル、21年に448億ドルの購入増となる。

だが、中国の経済成長率はかつての2桁の伸びから今年は6%に減速するとみられ、これだけの輸入増を吸収するのは難しい。

また、中国企業の手薄な分野の輸入が多いとは言え、2年間の増加額を単年度にならした場合、17年比で50%を超える増加となるだけに、競合する分野の中国企業は大きな痛手になるのではないか。

特に直近2年間で販売台数が前年割れしている自動車分野では、米国製の急増は、中国製への打撃になりかねない。実際、16日の市場で中国の自動車メーカー株は下落している。

<米の輸出増、割を食う日・欧・アジア>

また、中国の米国からの輸入拡大は、他の国の輸入減になる可能性を秘めている。例えば、500億ドルの輸入増となっているエネルギー分野で、米国からの原油輸入を増やした場合、シェアトップのロシア(15%)、2位のサウジアラビア(12%)のシェアダウンがありえる。

工作機械に関しても、日本の19年の対中輸出は大幅減となっており、そこに米国勢の進出が重なると、20年の「底打ち」を期待していた日本の業界の期待は、無残に打ち砕かれるリスクがある。

<残る関税、各国の設備投資に不透明感>

一方、中国から米国への輸出に関しては、2500億ドル分に25%の関税が残る。1200億ドル分にも7.5%の関税がかかり、中国からの対米輸出が急回復することは望み薄だ。

輸入増と望めいない輸出増が組み合わされば、純輸出における国内総生産(GDP)の寄与度は、19年比で低下することが予想される。

こういう状況で、中国企業が設備投資を再び、活発化させるのであろうか。答えは「ノー」ということになると予想される。

また、米国を除く日、欧、ASEAN各国の企業経営者も、「第1弾合意」で「霧が晴れた」と判断して、設備投資を大幅に増やす向きは少数派にとどまると思われる。

<見えない第2弾合意>

市場が期待する「第2弾合意」が、早期に形成されることも期待薄だ。米国は中国が頑なに拒否する「補助金」の規制を大きなテーマにする予定だが、中国の産業政策の根幹であるだけに、簡単に歩み寄りがみられる情勢にない。

中国共産党機関紙・人民日報傘下の環球時報は15日、関係筋の話として、第2段階の交渉は、すぐには始まらない可能性があると伝えていた。

トランプ米大統領も11月の米大統領選後に、第2弾合意が先送りされる可能性に言及しており、今のところ、早期合意の機運は盛り上がっていない。

とすれば、米国の対中関税は残存し、中国経済と中国の貿易相手国の経済下押し要因として機能し続けることになる。世界銀行は2020年の世界経済の成長率を2.5%と予測しているが、今回の第1弾合意にもかかわらず、世界経済の成長率は、低水準で横ばいとなるのではないか。

<高まる米株高への期待>

他方、先進各国の超緩和政策の結果、世界のマーケットは過剰流動性のうねりが収束する兆しを見せていない。金融を緩和しても、世界経済の成長率に弾みがつかない結果、先進国を中心に世界の長期金利は過去最低の水準を更新し、日本やドイツなどではマイナス圏の推移も目立っていた。

投資家の「イールドハンティング」の果てに、目ぼしい金利は「刈り取られ」てしまい、今やリターンが見込めて流動性もあるのは、株式市場だけという状況が生まれている。

特に独り勝ちの米国経済をみて、世界の投資資金は米株式市場に流れ込み、米株は最高値更新を続け、他の先進国の株式市場もつれ高を演じている。

「第1弾合意」後の世界のマーケットは、この傾向を一段と強めるのではないか。ダウ.DJIの3万ドル達成は目前であり、そう遠くない時期に3万ドルを突破するだろう。

米長期金利US10YT=RRは、今のところ、米経済に過熱がみられないことから、当面は1.7%─2%のレンジを形成する可能性が高い。

<米株について行けない日本株>

東京市場では、ダウとのつれ高を期待する市場参加者が多いと思われるが、新しいリーディング企業が見当たらない日本経済を反映し、日本株の上昇率は米株に劣後すると予想する。日経平均.N225は上がっても、2万5000円台で折り返すシナリオが有力だ。

ドル/円JPY=EBSは上昇しやすく、いずれ110円台に定着し、さらに円安を目指すだろう。この際の最大のリスクは、トランプ大統領の発言とみる。「円は安過ぎる」と”一喝”された途端、急速に円高方向に向かう「構造問題」を抱えていると指摘したい。

逆に言えば、トランプ発言の直前まで、じりじりと円安が進むと予想する。

米中の休戦で、最も困惑しているのは、目先の「材料」を見失った市場参加者ではないだろうか。

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編集:石田仁志

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2020-01-16 08:04:00Z
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