ベストメンバーでブライトン戦へ
今季のプレミアリーグは、圧倒的な強さを誇示したリバプールの首位が確定した。しかし、優勝争いの楽しみこそ消えたものの、同リーグで注目すべきポイントはまだ多く残されている。その一つが、チャンピオンズリーグ(CL)出場権争いだと言えるだろう。
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とくに、3位~6位までは勝ち点差が詰まっている。現在3位のレスターはリーグ再開後、ワトフォード、ブライトン相手にドロー。ブレーキを踏んだ。一方で4位のチェルシーはマンチェスター・シティを破るなど、再開後2連勝と好調。6位ウォルバーハンプトンも再開後は3連勝中と、安定感ある強さを発揮している。
また、5位マンチェスター・ユナイテッドも調子が良い。第30節のトッテナム戦ではドローに終わったものの、前節は難敵シェフィールド・ユナイテッド相手に3-0と完勝。結果はもちろん、内容面も完璧だった。そして、ユナイテッドはその好調ぶりを、第32節のブライトン戦でも遺憾なく発揮している。
敵地に乗り込んだユナイテッドは、現地時間27日に行われたFAカップ準々決勝のノリッジ戦に出場したDFハリー・マグワイアやMFブルーノ・フェルナンデスらがこの日も先発。下位チームを相手に、ベストメンバーを組んだ。
ノリッジ戦は120分間を戦い抜いており、その試合でフル出場を果たしたB・フェルナンデスやDFルーク・ショーといった選手には疲労の影響も懸念された。しかし、その不安は試合開始のホイッスルが鳴り響いてから間もなくして消えた。アウェイチームは立ち上がりから確実にボールを保持し、スピーディーで魅力的な攻撃を展開したのだ。
ブライトンは4-4-2の陣形を維持して守ってきた。ユナイテッドは相手の2トップにMFポール・ポグバとMFネマニャ・マティッチのダブルボランチへのパスコースを遮断されたが、サイドをうまく使いながら円滑にビルドアップ。サイドバックとサイドハーフが距離感をコンパクトに保つことで、タッチライン際で瞬間的な数的優位を作り出したのだ。
こうしてブライトンのプレスをいきなり無力化したユナイテッドは、16分にFWメイソン・グリーンウッドがゴール。序盤で掴んだ流れを途切れさせずに、良い形で先制点を挙げた。そして、ここから試合は一気に動き出すことになる。
早々に勝負を決めたユナイテッド
支配率を高めたユナイテッドは、ただボールを保持するだけでなく、ワンタッチパスを効果的に織り交ぜたテンポの良い攻めでブライトン守備陣を確実に深い位置へと追いやった。1トップのFWアントニー・マルシャルはやや孤立してしまったものの、FWマーカス・ラッシュフォードにグリーンウッド、B・フェルナンデスらは敵陣ゴール前での動きを止めず、相手を大いにかき乱した。
こうなると、守備に追われるブライトンはなかなか攻めに転じられない。ユナイテッドも攻守の切り替えが非常に素早く、どのエリアを見渡しても隙が無い。グレアム・ポッター監督率いるポゼッション志向の強いチームに対し、アウェイチームが点を奪われる気配はまったく感じられなかった。
こうしてペースを完全掌握したユナイテッドは29分に追加点。左サイドで起点を作り、最後はB・フェルナンデスがゴール右隅を射抜いた。この時、ブライトンは10人、ユナイテッドは8人がゴール前にいたが、数的不利な状況をお構いなしに崩し切ったのである。
と、前半を2-0と完璧な内容で終えたユナイテッドは、後半立ち上がりに見事なカウンターを炸裂させ、最後は再びB・フェルナンデスがゴールゲット。GKマシュー・ライアンからするとノーチャンスな、美しい速攻であった。
50分の時点で3-0。この時点でユナイテッドの勝利は確実だったと言える。そして、オーレ・グンナースールシャール監督は64分にショー、ポグバ、B・フェルナンデスを下げた。早い時間で勝負を決めたことにより、主力を休ませることにも成功したのだ。
しかし、その後は選手交代によりペースが崩れたのか、ユナイテッドはブライトンに押し込まれる時間が増えた。実際、68分にはFWアーロン・コノリー、75分にはアーセナル戦で話題となったFWニール・モペイに決定的なシュートを放たれている。
ただ、ここで立ちはだかったのはGKダビド・デ・ヘア。ここ最近は低調なパフォーマンスに終わっていた同選手だが、この試合では本来の実力を発揮し、スーパーセーブを連発してチームをピンチから救い出した。こうした個々の状態の良さこそが、チームの好調を支えている要因と言えるだろう。
攻守両面でインテンシティの高さを示したユナイテッドは、そのまま3-0で試合を終えた。これでリーグ戦は2連勝。ウェストハム戦を控える4位チェルシーにプレッシャーを与えることとなった。
B・フェルナンデスは神の領域に
「今日のパフォーマンスは非常に高く評価したい。素晴らしい出来だった。選手たちは自信とクオリティに溢れていた」と、スールシャール監督もチームへの賞賛を惜しまない。本当に、シーズン序盤とはまったく違った姿を見せていると言えるだろう。
また、ノルウェー人指揮官は「彼を獲得してくれたクラブのファインプレーに感謝している。前のチームはベストプレーヤーを手放したくはなかったはずだからね」とある選手にも賞賛の言葉を送っている。それが、ブルーノ・フェルナンデスだ。
今冬、スポルティングCPからユナイテッドに加入したポルトガル人MFは、すでに赤い悪魔の王様的存在として君臨している。この日も2ゴールを挙げており、シュート数4本、キーパス1本、タックル成功数3回を記録するなど、攻守両面で絶大なる輝きを放った。さらに、この日は後半途中で交代となったが、前半には走行距離5.74kmを記録。これはユナイテッドの中で最も多い数字となっていた。
B・フェルナンデスのセンスに関しては、もはや“神の領域”にある。足元の技術、視野の広さ、アイデアの良さすべてが揃っており、積極的に幅広いエリアに顔を出すため、いわゆる“消えている時間”というものがない。気づけばボールに触れており、常にベクトルをゴール方向へ。これが、彼の特筆すべき魅力である。
また、B・フェルナンデスは横パスの頻度がそこまで多くない。ボールを受けると必ず前を見て、ズバズバと縦パスを送り込んでいる。実際、それが引っかかることも多々ある。パス成功率で表すと、そこまで良くない数字が出ていることも少なくない。ただ、ここまで恐れずに効果的なパスを送り込める人材は、ここ最近のユナイテッドにはポグバくらいしかいなかったのも事実だ。
「彼は勝利者であり、そのようなタイプの選手を我々は必要としていた」とは指揮官の言葉だが、まさにその通りである。シーズン序盤はゴール前でスローテンポなボール回しを行い、攻撃を加速できずにいたユナイテッドだが、B・フェルナンデスはまさにそのウィークポイントを埋めた。それでいて自らゴールも奪えるのだから、これほど大きな補強はない。
ユナイテッドの試合を定期的にチェックしている人ならば当然わかるが、このポルトガル人の加入によってチームは劇的に変化した。「たった一人の存在で?」と思う方もいるかもしれないが、彼は本当に一人でチームを変えた。この日だけでなく、ユナイテッド加入以降ずっとMOM級の活躍を見せてきたその事実が、それを大きく証明している。
チームとしても結果が出ており、選手個々の調子も抜群に良いユナイテッドは、今まさに上昇気流に乗っている。目標のCL出場権獲得へ、視界は良好だ。
(文:小澤祐作)
【了】
"一人で" - Google ニュース
July 01, 2020 at 09:24AM
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