[ハンユニス(パレスチナ自治区ガザ) 4日 ロイター] - 2023年10月にガザ地区ジャバリアの自宅が爆発に巻き込まれたとき、ノアさん(11)の左脚はほぼ完全に引きちぎられてしまった。そして今、骨に4本のネジで止めた重い金属棒で固定された右足も、切断手術が必要になるかもしれない。
病院のベッドに横たわるノアさんは、不格好な固定具を見つめながら「とても悲しい……もう一方の脚も切断しなければならないのではないか」と話す。
「走ったり遊んだりして、とても幸せに過ごしていたのに、脚を失ったことで惨めな一生になってしまい、悲しい。義肢をつけられればいいのだが」
イスラム組織ハマスによる10月7日の奇襲に対し、イスラエル軍は報復攻撃をおこなった。爆弾やミサイルが人口密度の高い高層住宅地区を破壊し、爆風やがれきによりけがをした子どもらが、手足の切断手術を受けるケースが増えている。
イスラエル当局は以前から民間人への危害を最小限に留めるよう努力していると発言している。同国軍広報部は、ハマスが「テロ攻撃を目的として民間施設を流用する」戦略をとっているという主張を繰り返しているが、四肢切断に至った子どもらについては特に言及していない。
医師や支援関係者の話では、ガザ地区の医療体制は崩壊しており、まだ成長過程にあるのに切断されてしまった子どもたちの骨に配慮した複雑なフォローアップ治療を行える状態にはない。世界保健機構(WHO)によれば、殺害や拘束、強制退去により、実働中の医療従事者は紛争前の30%しかいないという。
国連児童基金(UNICEF)によれば、下肢の切断手術を受けた子どもは1000人を超え、複数回、あるいは左右両方という例もある。ガザの医療当局は、今回の紛争における負傷者の4分の1近くは子どもだと話している。
劣悪な衛生状態と医薬品の不足により、以前に負ったけがでも細菌感染に伴う切断手術が必要となり、手足を失う結果となる例もあると医師らは話している。
非政府組織(NGO)の「国境なき医師団(MSF)」に参加する英国出身の救急医師クリス・フック氏は、12月末にガザから戻った。「当初は切断しなくて済むと思われても、後日、切断手術が必要になる場合が多い。切断手術を行った患者や、切断せずに済んだと思った患者でも、長期的な影響により死に至ってしまうことも多い」と語る。
<飛び交うハエ、切断部分の壊死(えし)>
ノアさんが治療を受けているガザ・ヨーロッパ病院は、通常の3倍の患者を受け入れている。職員らによると、ノアさんが夢見る新たな義肢を提供するのは難しい。
切断手術を受けた患者の慢性的な痛みを抑える鎮痛薬でさえ不足しているという。ロイターの記者が訪問したときは、病室の周囲をハエが飛び交っていた。
ワファ・ハムダン看護師は「患者の苦痛を和らげるため、看護師としてできるだけのことをしている。だが私たちがどれだけ努力しても、患者は心理的に深刻な問題を抱えている。多くの苦痛とともに喪失感を抱いている」と語る。
ガザ地区で義肢を扱う主要拠点となっているのは、カタールの出資でガザ市に建設されたハマド病院だが、現地の医療当局によれば、イスラエルの攻撃を受け、数週間前に閉鎖されてしまった。
イスラエル軍広報部にハマド病院についてコメントを求めたが、今のところ回答はない。
専門家によれば、戦争に関連して手足の切断手術を受けた子どもは骨がまだ成長を続けているため、成人するまでに最大で十数回の手術を受ける必要があるという。
だが医療従事者らによれば、今回の紛争以前でさえ血管外科医や整形外科医は不足していた。パレスチナ医療当局は、紛争開始以来300人の医療従事者が殺害されたと話している。
それでも、右脚を切断せずに済むかもしれないノアさんは幸運な方かもしれない。治療の時間がない、専門的な医療技術がないなどの理由で即座に四肢の切断手術を受けた子どもたちもおり、ときには麻酔なしという例さえあった。
WHOの救急医療チームのコーディネーターを務めるショーン・ケイシー氏によると「残念ながら、そうした切断手術の多くは実際には必要なかった」という。
手術が唯一の選択肢だった場合もある。子どもらは負傷後、何日もたってから病院に到着しているからだ。
UNICEFの広報担当者ジェームズ・エルダー氏は、負傷した左足の壊死が始まっている子どもを目にしたという。軍検問所の通過に手間取り、3日以上もバスの車中で足止めされていたからだ。
イスラエル軍広報部は、この事案から当面の教訓を得るため作戦報告会を開き、さらに検証を行う予定だと述べている。
<面会に来る人もなく>
ガザの医療当局では公式の統計を取っていないが、医師や支援関係者の話によれば、UNICEFが紛争開始から2カ月で下肢切断手術を受けた子どもは1000人としているのは正確だが、その後さらに増えている可能性が高いという。ガザにおける四肢切断手術の実施率は、他の紛争や災害に比べて異常に高くなっている。
ウクライナでも、ロシアによる侵攻下で高層住宅がミサイル攻撃を受けているが、オンブズマンによれば、子どもの四肢切断手術は30件とされている。
英国系パレスチナ人の外科医であるハサン・アブシッター氏は、ガザ地区で一晩に6件の四肢切断手術を執刀したと話している。膿を除去するため、手術を受けた子どもの大腿部の切断部分を再度切開したこともあるという。
MSFのフック氏も、切断部分が細菌に感染してラファの診療所に戻ってくる人が多いと報告している。
四肢切断手術を受けて病室に横たわる子どもらは、多くが両親を失っている。12月にガザを訪れた国際赤十字委員会のミリアナ・スポリアリッチ総裁は、そうした子どもらの姿が忘れられないと話す。「痛々しい傷跡や、不足する鎮痛薬。面会に来る人もいない」
両親を失ったリタシュさん(10)と面会した国連人道問題調整室(OCHA)の支援担当者ジェンマ・コネル氏によれば、リタシュさんは右脚の切断部分の感染のため、膝のすぐ下の位置で再び切断手術を受けなければならなかったという。
写真に映るリタシュさんは、床の汚れた病院で車椅子に座っている。右脚の先は失われ、表情は歪んでいる。コネル氏は「私と同じ光景を目にすれば、誰もが心を引き裂かれるだろう」と話した。
(翻訳:エァクレーレン)
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