<米中対立激化でテクノロジー開発を急ぐ習政権。反汚職キャンペーンで産業育成を目指すが......>
2012年秋に習近平(シー・チンピン)体制が誕生して以来、中国政府は反汚職キャンペーンに力を注いできたが、ここ数年はそれが新たな重要性を帯び始めている。
米中対立の激化を背景に、中国政府はテクノロジー分野での外国依存を弱めるため、規律と統制という過去に例のない手法を採用し始めた。その一環として汚職の摘発を強化しているのだ。
中国共産党で汚職取り締まりを担う中央規律検査委員会は21年秋以降、政府の金融当局の高官たちを立て続けに調査対象にしてきた。銀行保険監督管理委員会や中国証券監督管理委員会、さらには中国人民銀行(中央銀行)の幹部が共産党から除名されたり、死刑判決を受けたりしている。
政府高官だけではない。招商銀行、中国銀行、中国光大集団などの金融機関の元トップたちも相次いで調査の標的になっている。
汚職の根絶や資本の非効率の解消そのものは、これまでも習政権が目指してきたことだ。しかし、アメリカによる対中制裁や輸出管理を受けて、この政権はテクノロジーの自給強化を国の重要目標と位置付けるようになった。
それに伴い、テクノロジー産業の有力投資家を反汚職キャンペーンの標的にするケースが増えている。この分野における腐敗が中国のテクノロジー産業の成長を妨げていると考えているためだ。
テクノロジー分野に注力している投資銀行の華興資本では、創業者で会長の包凡(パオ・ファン)が2月以降身柄を拘束されている。これに先立って、同社の社長を務めた叢林(ツォン・リン)も取り調べの対象になっている。
産業界を萎縮させる?
これとは別に、半導体産業を標的にした摘発も目立つ。半導体産業の育成を目的に設立された政府系投資基金「国家集成電路産業投資基金(CICF)」(通称・ビッグファンド)の多くの幹部たちが調査対象になっているのだ。
摘発や粛清と並行して、中国政府はテクノロジー産業への投資に対する監督の在り方も大きく改めた。3月には、共産党中央委員会が直轄する中央科学技術委員会を新設して、科学技術分野を監督させることが発表された。
この新体制の下で、重要性の乏しい業務を他省庁に移管する一方で、重要なテクノロジーの開発を促進する科学技術省の役割が強化された。これにより、適切な投資を後押ししようというのだ。
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